芝生の情報館

あなたにもできる!西洋芝の管理

2.芝生の施肥(肥料散布)

1)肥料散布に必要な器具

<粒状肥料を散布する場合>

粒状の固形肥料を散布するために必要となる機具は以下の通りです。

なお、肥料散布のための機械として肥料散布機(散粒機、スプレッダー)が販売されておりますが、小面積の芝生の場合には手撒きでも差し支えありません。肥料散布機の使用は芝生面積が大きい場合やより均一に散布したい場合などにお勧めいたします。

  • 家庭用はかり:粒状肥料を計量するために使用します。
  • 小型のバケツ、ポリ袋など:粒状肥料を手撒きする場合に使用します。大面積の場合には下記の肥料散布機をお勧めします。
  • 肥料散布機:粒状肥料を散布するための機具です。大面積の芝生に散布する場合に必要になります。

<補足事項>

  • 肥料散布機にはハンディータイプの手動式のものや手押し式のもの、電動式のものなど様々な種類があります。芝生の広さに合わせて適切な機種をお選びください。
  • 大面積の芝生に肥料を手撒きする場合には、できるだけ均一に撒けるよういくつかの区画に区切って散布することをお勧めします。その際には、重複して散布しないよう水糸などで目印を付けておきましょう。

<液体肥料を散布する場合>

  • 噴霧器 または ジョウロ:希釈した液体肥料を散布するために使用します。
  • 計量カップ と ピペット:液体肥料や水を計量するために使用します。キャップに計量用の目盛りが付いている場合もあります。
  • バケツ:液体肥料を水で希釈する際に使用します。
  • 撹拌棒(かくはんぼう):液体肥料と水を混ぜるために使用します。液体をかき混ぜられるものであれば何でも結構です。

<補足事項>

  • 使用する器具は念のため使用前に十分に洗浄しておきましょう。特に薬剤散布に使用した後などは丁寧に洗浄してください。
  • 噴霧器のノズルやジョウロのハス口をよく洗浄し、目詰まりがないことを確認しておきましょう。
  • 芝生面積が大きい場合やより均一に散布したい場合にはジョウロでなく噴霧器の使用をお勧めいたします。

2)肥料の種類と施用量

芝生に使用する肥料としてお勧めするのは、粒状の化成肥料と液体肥料です。その中でも特に粒の小さな粒状肥料は芝生の奧深くまで入りやすいため葉焼けしにくく、肥料ムラも少なくなるため、芝生用肥料として適しています。

粒状の化成肥料には成分の多少によって、高度化成(成分量の多い化成肥料)と普通化成(成分量の少ない化成肥料)とがありますが、特別な意図でもない限り、成分の少ない普通化成を使用した方がよいでしょう。芝生への肥料散布で最も恐ろしい失敗は、肥料の与えすぎと肥料焼け(肥料成分の濃度が高すぎて肥料が付着した箇所が変色したり枯れてしまう症状のこと)です。高度化成を使用した場合、それらのリスクが普通化成に比べて高くなります。普通化成であれば、多少のミスも許容されるところがあるので、不慣れな内は普通化成を使用すべきでしょう。

また、肥料は効果の現れる速さによって、速効性肥料と緩効性肥料とに分けられます。速効性肥料は施用すると早期に効果が現れますが、その分、早く効果が切れてしまいます。緩効性肥料は速効性ほどすぐに効くわけではありませんが、じわじわと長く効いてくれるので頻繁に肥料散布を行う必要がありません。よって、お庭の芝生に撒くのであれば、断然、後者の緩効性肥料がお手軽でお勧めということになります。

液体肥料(液肥)も使用時期などによっては大変有用な肥料です。液肥の良さは、水で薄めて散布するため自在に施用量を調整できることや肥料ムラが生じにくいこと、芝が弱って根から養分を吸収しにくくなった場合でも微量とは言え葉面から吸収させることができること(葉面散布用の肥料もあります)などがあります。ただ、液体であるため保肥力の低い土壌では肥料成分が失われやすく、効果の持続性という点では固形肥料には敵いません。芝生の場合にはあくまで使用目的が明確な場合に使用する補助的な肥料だとご理解ください。

上記以外にも、堆肥などを含む有機質肥料、中量要素や微量要素を含む肥料、土壌の酸度調整を兼ねた肥料など様々な肥料があり、それぞれに特徴を持っています。芝生を長く管理していますとそれらを必要とする場合も起こりうるはずですが、基本的には、窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)という三大要素を含む細粒の普通化成肥料で緩効性のものを選び、それを中心とした施肥プログラムを考えてみることをお勧めいたします。その上で、芝生管理の経験と知識を深めながら、ご自分の芝生に合った施肥プログラムを作成し、適宜、改良していくことをお勧めいたします。

<補足事項>

  • 一口に肥料と言っても実に多くの種類があり、それぞれに形状や化学的な性質、成分の種類、成分量、効果の出方などが異なります。したがって、まずは基本的な肥料の種類と特徴、成分表の見方などを学習しておくことが大切です。そうした基本的な知識を持っていれば、園芸店に並ぶ多くの肥料から適した肥料を選べるようになりますし、誤った施用の仕方をして芝にダメージを与えたり、無駄な肥料を撒いてしまうことなどもなくなるはずです。
  • 肥料はいろいろな分類の仕方があるため、正確な名称(呼び方)を覚えるのはかなり厄介かも知れません。ただ、実際に肥料を購入したり、使用したりする場合に知っておくべき名称はそれ程多くはありません。基本的には、無機肥料と有機肥料の区別や、固形肥料と液体肥料の区別、化学肥料(化学的に合成された無機肥料)に含まれる単肥、複合肥料、化成肥料の区別、化成肥料の含有成分量による普通化成と高度化成の区別、効果の速さの違いによる速効性肥料と緩効性肥料の区別、などが理解できれば十分でしょう。あとは種類毎の特徴や性質などを理解することで肥料の使い方が分かってくるかと思います。
  • 理想的な施肥とは、土壌分析結果などの科学的データに基づき、数ある肥料の中から最も適切な肥料を選び、適切なタイミングと方法で適切な量を施用することだと言えますが、しかしながら、家庭園芸においてそのような理想的な施肥を行うことは実質、不可能ではないでしょうか。まずは下記に示した施肥モデルを参考に一つのプログラムを試し、芝生の反応を見ながら、少しずつ修正、改良していくのが最も実用的だと思います。

3)施肥量の目安

以下に粒状の化成肥料と液肥を使用した場合の施肥プログラムの一例(北関東辺りの気候を想定したもの)をご紹介します。(注:表中の「粒状」とは粒状化成肥料のこと、「液肥」とは液体肥料のことを示しています)

以下の例では、窒素量にして1年間で20g/m2の施肥が必要となっておりますが、これはあくまで一つの目安で、実際には、お住まいの地域の気候や刈り込みの頻度、芝の種類や生育状態、床土の土質や肥沃度などに合わせて総合的に判断し、上手に調整する必要があります。さすがに経験を積みませんとどの程度加減すべきかの判断は難しいかと思いますが、とりあえずは少量ずつ、芝の伸びる速さや葉色を見ながら施用してみると良いでしょう。とにかく、肥料は一度与えてしまうと後で減らすことができません。足りない分にはいくらでも後で追加できますので、判断に迷ったら少量ずつ、何回かに分けて与えるようにしてください。

なお、下記の施肥プログラムは窒素成分だけを基準としたものですが、芝の健全な生育には窒素以外の成分も必要になります。初級者の段階で使用するのであればN-P-Kの成分比が8-8-8や10-10-10といった水平型の化成肥料(粒状肥料の場合)がお勧めとなりますが、中級、上級を目指すのであれば、N-P-Kの成分比が異なる肥料やカルシウム、マグネシウム(苦土)などの肥料、その他の微量要素肥料、更には葉面散布用肥料や糖類、アミノ酸、サイトカイニンなどを含む生育活性剤なども用意して、芝の生育ステージや生育状態(根の状態)、季節や天候などに応じた使い分けに挑戦してみましょう。

年間の窒素施肥プログラムの一例(単位:g/m2
(ベントグラス、ケンタッキーブルーグラス、ジョイターフ等)
  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計
化成肥料(8-8-8) 0 0 20 35 35 25 10 10 20 40 35 20 250
上記の窒素成分量 0 0 1.6 2.8 2.8 2.0 0.8 0.8 1.6 3.2 2.8 1.6 20
肥料のタイプ - - 粒状 粒状 粒状 粒状 液肥 液肥 液/粒 粒状 粒状 粒状 -

4)作業方法

肥料の撒き方として第一に心掛けたいのは、肥料を芝生全体に均一に撒く、ということです。そのためには肥料散布機を使用することが最も簡単かつ確実ですが、小面積の芝生では大袈裟な印象も否めません。手撒きであっても、工夫次第ではかなり均一な散布も可能ですので、ここでは手で粒状肥料を撒く方法について簡単にご紹介いたします。

  1. 散布する粒状の化成肥料(できるだけ細粒のもの)、バケツ、はかりなどを準備します。
  2. 小面積の芝生であれば一度に撒けますが、芝生が広い場合には複数の区画に分け、水糸を張るなどして目印を設定します。
  3. 一区画に散布する肥料の量を計算し、その半分の肥料を計量してバケツ(ポリ袋など)に入れます。
  4. 肥料を手に取り、左右に振りながら区分内に均一となるようパラパラと撒いて行きます。この時、体の向きはかえず一方向に移動するようにします(ここでは、仮に南北方向とします)。
  5. つぎに残り半分の肥料を計量し、空いたバケツ(ポリ袋など)に入れます。
  6. 今度は上記の移動方向とクロスする方向(ここでは東西方向ということになります)に移動しながら、残りの肥料を均一に撒いて行きます。
  7. 複数の区画に分けた場合、残りの区画についても同様の方法で肥料を散布します。
  8. 最後に、芝生全体にたっぷりと散水を行います。これにより茎葉の上に残った肥料が芝生の中に落ちると共に、溶け出して芝に吸収されるようになります。

<補足事項>

  • 肥料焼けを防ぐためにも、散布時の天候や気温には注意が必要です。気温の高い時期の日中などに散布しますと、肥料焼けをおこす危険性が一層高くなります。できるだけ気温の低い時間帯(夕方)や曇天の日などに散布するようにしましょう。また、化成肥料の粒が茎葉の上に長く残っていますと肥料焼け(葉焼け)の原因になります。散布後には必ず散水するか、降雨の直前に散布するよう心掛けましょう。
  • せっかくの肥料も散布量が多すぎますと芝の徒長(注)をもたらし、かえって芝生の状態を悪化させる原因となります。くれぐれも過剰散布とならないようご注意ください。
    注)徒長(とちょう)とは、窒素過多や日照不足、密度過剰などによって茎葉が充実しないまま伸びすぎて、弱くなることを言います。
写真8.バケツに肥料を移します 写真9.手で満遍なく散布します 写真10.均一に撒きましょう 写真11.散布後は散水します